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第14章 連續

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連続と訳されてゐる言葉は succession です。フランス語の辞書を引くと、次ぎのやうな説明が出てゐます。

  1. 近い時点に起きるが別々の(事件や現象など)事項の総体で、ある秩序(順序)が見られるもの。これらの項目の間にある関係。
  2. 空間の中で接近してゐる物の一連で、その間に、ある秩序立てが可能なもの。

続いてゐるもの、続いてゐることを意味すると言へるでせう。

細かな揚げ足取りのやうで済みませんが、第1段落の「數の全體」とあるのは、整数といふのが正しい訳だと思ひます。

第2段落の最後に、

思ひ出に秩序があるかどうか、暦の數字の樣な配列があるかどうか、事實の上では、さういふ議論はお互に果しのないものだ、お互ばかりではない、自分自身のうちで議論してみても果しのないものだ。

とありますが、原文は次ぎのやうな意味だと思ひます。

ともかく、実際には、人間は互いに、或いは自分たちの中で、思ひ出の順序について果てしなく議論するだらう、暦の数字の列がなかつたとしたら。

第3段落のはじめに、

大砲の音は、命中した時の光に連續してはゐない、併し、遠い處に立つてゐる僕にとつては連續してゐる。

とあるのは、発射のときの光と音が、本来は同時なのに、遠くでは続いて(前後して)聞こえることを指してゐるのでせう。

アランが示したかつたのは、最後の段落にあるやうに、

僕等にとつての連續は、眞の連續によつて定まる、眞の連續は、連續といふものの理論上の觀念に他ならぬ原因の觀念によつて定まる

といふことでせう。ここでも、連続といふ言葉は、「続き具合」とでも読んだ方が意味は通り易いかも知れません。記憶は、実際の出来事の順序とは無関係に蘇るので、正しい順序を決めるには、因果関係といふ理論的な基礎が必要だと言ふのです。


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