この章は、形式論理学についての解説で、私は、昔習つたAかつBとかAならばBなどを思ひ出しました。三段論法の三つの形といふのは初耳ですが、フランスでは、かういふのも学校で習ふ(少くともアランの時代には習つた)のでせう。
かういふ話を初めて読まれる方は、ややゴタゴタして分かり難いと思はれるかも知れません。アラン自身が「やや無味乾燥な研究」étude un peu aride だと言つてゐます。小林訳では「やゝ困難な研究」となつてゐますが。
しかし、この章でアランが言ひたい事ははつきりしてゐます。明確に定義された言葉だけをいぢくり回しても、新しい知識は得られない、といふのです。何かが得られたと感じられるのは、最後の段落にあるやうに、対象を考へるために、知らず識らずの間に、言葉の意味を豊かにしてしまふからであり、さうした意識しない動きは、誤りにつながる。
第二章にあつたやうに、アランは純粋な論理学とは何か、それは数学とはどう違ふかを示さうとしてゐるので、言葉の持つ魔術的な力への警戒を説いてゐるのです。
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